『ハサミ男』は見事なミスリード。思い込みを利用した叙述トリックだ

ハサミ男

ハサミ男


著者:殊能将之
出版社:講談社(講談社文庫)
出版年月日:2002/8/9
ページ数:520ページ
ISBN-10:4062735229
『ハサミ男』レビュー
5.3 管理人の総合評価
読みやすさ
為になる
何度も読みたい
面白さ

なんとも見事に騙された…。『ハサミ男』は二度読みしないと100%楽しんだことにはならないミステリー。

※ネタバレするつもりはありませんが、ネタバレになっちゃうかもしれないので、そーゆーのは事前に知りたくないというあなたはこの記事は読まずに、まず先に作品を読んでください。

さて。

スポンサードリンク

Amazonのレビューの評判が良かったので、とりあえず買ってみたのだけれど、やっぱり騙された

騙されたというのはレビューの評判にというわけではなく、作者のトリックに。面白かったですよ、単純に。

ただ、面白かったけれども今までの叙述トリック系の本、例えば、

などに比べると、若干雑だったかなぁと。いい意味で。

雑って言うと悪い印象があるかもしれないけれど、今まで僕が読んできた叙述トリック系の本は最後の数ページで「あ!騙された!」という所があったのに比べ、この本は所々にヒントが落ちている。そのヒントがヒントじゃないというか…。

読んでいて、「ん?なんか違和感あるよな?」という感じを抱きながら進めていき、「あぁ!あの違和感はコレかよ!」というラストに至る。叙述トリックあるんでしょ?ミスリード誘っているんでしょ?っていう感じで注意しながら読んでみても、そんな関係ない所からひっくり返されるから「くそう!」となる。

…なんともまとまらない感想。

つまり、かなり抽象的に感想を述べると…

頭の中がぐるぐるかき回されて何を読んでいるのかわからなくなって、事実はどれかわからなくなって、結局騙された形になる作品。

…うーん、これでも表現できていない。なんかわからないけど、面白いので良し!という感じ。見事に騙されたっていうわけじゃないのだけれど、なんか騙されたんだよな、きっと。ってなる作品。その辺りが雑だって感じたのかな。

しかし、なんで面白いって感じたのかなぁって考えると、作品に流れる空気感が他の叙述トリックだけで引っ張っていく作品に比べると爽快なものがあるからなのかな。なんというか、主人公が好きになってしまう

まぁ、この主人公ってのがそもそも殺人鬼ハサミ男なわけだけれども、第三の殺人を起こそうと思っていたら先にターゲットを殺されてしまい、その真犯人を殺人鬼が探偵になって探すという流れなわけだが、この主人公がなんともユニークな殺人鬼なのです。

殺人鬼にユニークもクソもあるかって感じなのだが、この主人公は自殺願望があり、作品中に何度も自殺を試みる。しかし、すべてが上手くいかず生き延びる。結果、それがすべて上手くいっちゃっている形で終わるんだが、まぁそれはネタバレになりそうなので詳しくは書かない。

そんな自殺願望を抱きながらも、結構なグルメで食事にはうるさい。生きたいのか死にたいのかどっちなんだよ?っていう主人公で、頭がいいのか頭が悪いのかどっちなんだよっていう主人公。

またその主人公が多重人格者?のような表現で書かれていて、結局、これ映像化したらどうなるんだよ!って思いながら、やっぱりそれは叙述トリック作品で映像化は難しいよなぁ…。

…なんて思って、調べてみたら映像化されてるんだね、この作品。

なんか、つかみどころのない作品な気がしてならないのだけれど、作品の終わり方はかなり好きな終わり方だったし、なんだかんだでこういうの好きなんだよなって思いました。

先に挙げた叙述トリック作品を読んでみて、面白かったっていうあなたは読んでみてもいいかもしれない。絶対にお勧めっていうわけではないけれど、読んでみたら意外と面白いですよ。

Amazonのレビューは賛否両論だったけども、僕はそんな感じの感想でした。

…もやもや。

はい。

そんな感じです。

良かったら読んでみてください。むちゃくちゃ盛り上がるっていう感じではないけれどつまらなすぎるというわけでもなく、非常に読みやすい文体で気軽に騙されたいというあなたに。

あ、一応、気に入った部分を引用して終わります。

気に入った部分の引用

無意識なんてものは存在しないんだよ。存在するのは事実だけさ

自分が死にたがっているということを証明するには、自殺を成功させるしかない

「高齢者が天寿をまっとうするのは、もう生きていたくない、死んでしまいたい、とついつい思ってしまうからさ。そんなこと思わなげれば、もっと長生きできるのにねえ。したがって、結論はこうだ。あらゆる死は自殺である」

ファストフードのコーヒーは濃すぎるし、ファミリーレストランのコーヒーは薄すぎる。これが外食産業の第一法則である。

もしかしたら、この自殺願望が消え失せ、わたしが生きる希望を取りもどしたときに初めて、死が訪れるのかもしれない。

「あのね、自殺未遂者が嫌われる理由はふたつある。ひとつは、自殺未遂によって他人を支配しようとするからだ。別れるくらいなら死んでやる、とか叫んで、剃刀で手首を切ってみせるやつが典型的な例だね。わたしは自殺という普通の人間にはできない行為を試みた。ゆえに他人はわたしの言うことを聞かなければならない。そんな馬鹿げた論理を押しつけようとする」

「もうひとつの理由は、自分を特別な存在だと勘違いしているからだ。わたしは自殺という普通の人間にはできない行為を試みたうえに、なんたる天の配剤か、苦痛と死から無事に生還した。何かがわたしに生きろと告げている。ゆえに、わたしは特別な存在なのだ、というわけだ。だから、表情だけは暗く装って、自慢したい気持ちをにじませながら、喜んで自殺未遂体験を語ったりする。頭が悪いとしか言いようがないな。そんなのは天の意思でもなければ、彼ないしは彼女の意思とも無関係、たんなる統計的な偶然にすぎない。たまたま生き残ったから、偶然を必然に取り違えてしまうんだ。熊に出くわしたときの対処法みたいなものだね」

クレジットカードを使わないと幸福を買えない女の子は少なくないに違いない。

ふたつの異なるからっぽがある。その境目がわたしだった。

完璧な幸福など、テレビのホームドラマのなかにしか存在しない。

引用:「ハサミ男」殊能将之(講談社文庫)

以上です。

ではでは。

にゃんこ先生
それにしても、こういう文章が書ける人ってどうやって書いてるんだろうにゃ〜

スポンサードリンク

コメントを残す