『孤島の鬼』とかいう人には言っちゃダメそうな作品に心を奪われた…

孤島の鬼


著者:江戸川乱歩
出版社:東京創元社
出版年月日:1987/6/26
ページ数:400
ISBN-10:B007X8XMSE

孤島の鬼』をずっと前に友人の彼女に勧められて、本自体は買ってあったのですが、まぁ色々とあって読まずじまいで本棚に飾ってありました。5年ほど熟成され、もうそろそろ読んでもいいかなと思い、読み始めてみると…。

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10秒でわかる『孤島の鬼』のストーリーのまとめ

職場で恋に落ちた主人公、蓑浦。お相手は3歳の時に親に捨てられはしたが、育ての親に大事に大事に育ててもらった初代という女性。上手くいっていた二人だったが、初代に猛烈に求婚を迫る諸戸という男性が現れ事態は急変。諸戸は蓑浦の学生時代の先輩で蓑浦に迫った事のある同性愛者の男だった。ある日初代が殺されてしまい、恋人の復讐を誓った蓑浦は犯人を探る為、探偵を雇う。が、その探偵も殺されてしまう。蓑浦は諸戸の嫉妬心を深く疑うが、物事はそう簡単な話ではなかったのだ…

もし、あなたに喫茶店で『孤島の鬼』ってどんな本?あらすじは?と聞かれたなら…

野口明人
この本は一言で言えば、竜頭蛇尾の逆のようなミステリーなんだ。なんというか、最初は蛇のように些細な事件、よくある密室トリックを解いていくミステリー小説に思えるけど、真相を追っていくと、竜のように末恐ろしいサスペンス、怪奇事件、だったー…みたいな。
もうひとりの僕
江戸川乱歩の最高傑作と言う人も多いぐらい評価は高いのだけど、その実、扱っているテーマが今の時代的にはクレームがつけられてもおかしくないものなので、正直人には勧めにくい作品だと思った。最近じゃ神奈川で大きな事件もあったし。まぁ、あれだ。障がい者を大々的に取り扱った作品なのだよ。
野口明人
確実に面白い内容なのだけれど、これを面白いと言っていいのだろうか…と思っている自分もいるのは確か。芸術としての作品と現実の表現としての文章を上手くわけられないタイプの人は多分、すげー不快感を覚えると思う。
もうひとりの僕
これを読んでいる時に、芥川龍之介と谷崎潤一郎の『文芸的な、余りに文芸的な』のやり取りをちょっと思い出したよ。ま、思い出しただけで、だから何だって話なんだけど。
野口明人
それに最近じゃLGBTの事もよく取り上げられるわけで、同性愛者も主要人物として登場しながら、若干同性愛に対して批判的な立ち位置な書き方してもいるから、これも今じゃ問題にされてもおかしくないよなぁ…とか思ったりもする。
もうひとりの僕
でもさ、これは文学であって作品であって、人を描いたものなのだよ。現実に江戸川乱歩が障がい者についてどう思いながら書いてるとか同性愛についてどう思っているとかよりも、登場人物がどう考えているとか、その時どう感じたかなどを表現するのが文学だと思うから、それを読んで面白いと感じる事は障がい者や同性愛を侮蔑しているという事にはならないと思うんだよね…。
野口明人
ま、そんなもっともらしい事を言った所で、文句を言う人はいるし、それはその人の考え方だし否定も出来ないし…って事で人に勧めにくい作品なわけだね。
もうひとりの僕
だからとりあえずテーマは置いておいて、ストーリー展開、あらすじの話をしよう。さっきも言ったけど竜頭蛇尾の逆のようなすげー話なんだ。
野口明人
竜頭蛇尾はさ、頭は竜のように立派だけど、尾っぽは蛇のようにしょぼいって意味じゃん?それの逆。最初は大したことないと思ったのに、徐々に加速していって、うおおお!!!って感じで大団円。
もうひとりの僕
あらすじで言えば、運命の人と思っていた初代が殺されてしまって、ひどく落ち込んでいた蓑浦は、過去にフッてしまった同性愛者の諸戸を疑わざるを得なかった。嫉妬心が産んだ殺人事件ぐらいに考えていたんだけど、探偵を依頼した友人ですら変死してしまう。人間の所業とは思えない二つの殺人事件。蓑浦は勇気を出して諸戸を直接問い詰める事に決める。
野口明人
その諸戸から聞いた話が、実はこの二つの殺人事件がタダの殺しではなく末恐ろしい、鬼の呪いの始まりだと知らされるわけ。
もうひとりの僕
うーんそうだな。ちょっと昔だけど、本木雅弘と菅野美穂が出てた『幸福の王子』みたいなドラマが好きなら、この本が好きかもしれない。最初に結末が語られて、なぜこんなことになったのかを描いていく系のやつ。あれも主人公が白髪になっちゃった話だし。
野口明人
ま、興味が湧いたらAmazonのレビューみたり、Wikipediaで調べたりしてみてよ。ネタバレするかもしれないから、出来れば読んでから調べて欲しいけど…。
もうひとりの僕
最後に言いたいのは、この作品が今から90年ぐらい前に書かれたとは思えないぐらい、クッソ読みやすいって事だ。時代背景や情勢は確かに古さを感じるけど、昔の作家にありがちな読みにくさは全くと言っていいほどないよ。現代作家の作品のようにすらすら読めるのが本当にすげーって思うね。

…そんな事を「孤島の鬼」についてカフェで話すと思います。

『孤島の鬼』で気に入った表現の引用

だが、何をいうにも、私には文章の素養がない。小説が好きで読むほうはずいぶん読んでいるけれど、実業学校の初年級で作文を教わって以来、事務的な手紙の文章のほかには、文章というものを書いたことがないのだ。なに、今の小説を見るのに、ただ思ったことをダラダラと書いて行けばいいらしいのだから、私にだってあのくらいのまねはできよう。

ほんとうのことをほんとうらしく書くことさえ、どんなにむずかしいかということを、今さらのように感じたのである。

私は、今からたった十三、四時間前に、新橋の鳥屋でさし向かいに坐って、笑い興じていた初代を思い出した。すると、内臓の病気ではないかと思ったほど、胸の奥がギュウと引締められるような気がした。その刹那、ポタポタと音を立てて、仏の枕元の畳の上に、つづけざまに私は涙をこぼしたのであった。

私は草の上に倒れて、異常なる興奮にもがき苦しんだ。「死にたい、死にたい」とわめきながら、ころげまわった。長いあいだ、私は、そこにそうして横たわっていた。だが私は、恥かしいけれど死ぬほど強くはなかった。或いは、死んで恋人と一体になるというような、古風な気持にはなれなかった。その代りに、私は死の次に強く、死の次に古風な、一つの決心をしたのである。

恋こそ奇妙なものである。それは時には人を喜びの頂天に持ち上げ、時には悲しみのどん底につきおとし、また時には、人に比類なき強力を授けさえするのだ。

私は慰める言葉もなく、わずかに彼の手を握り返して、千万の言葉にかえた。

どんな冒険でも、苦難でも、実際ぶつかってみると、そんなでもない、想像している方がずっと恐ろしいのだ、ということを悟った。

この日頃の奇怪なる経験は、いつの間にか、私を冒険好きにしてしまった。戦争と聞いて肉がおどった。

こんな時には、ただあせったって仕方がない。ゆっくり考えるんだね。足で出ようとせず、頭で出ようとするんだ。迷路というものの性質をよく考えてみるんだ。

徳さんがどうして生きていたかと、不審にたえなかったが、なるほど、彼はカニの生肉で飢をいやしていたのだ。私たちはそれを徳さんに貰ってたべた。冷たくドロドロした、塩っぱい寒天みたいなものだったが、実にうまかった。私はあとにも先にも、あんなうまい物をたべたことがない。

引用:「孤島の鬼」江戸川乱歩(東京創元社)

まとめ

いやー、買ってからかなり時間経ちましたし、正直、昔の作家だからというので読みにくいのでは?と敬遠してました。江戸川乱歩も短編集しか読んだことなくて。でも、やはり友達の彼女が「人生最高の一冊」とおすすめしてくるだけはありました。

これほどまで読みやすく、読み進めるほどに加速していく物語は珍しい。やっぱりすげーんだな。らんぽ。コナンくんが名前を拝借しているだけあるよ。

レビューも相当多いですし、沢山の感想もブログなどで発見できると思います。グロテスクという言葉がこの作品の評価で使われる事が多いですが、グロテスク耐性がない人でも大丈夫な作品だと思います。そこまでうわーーーーーってほどでもありません。

また、BLミステリーとして取り上げられる事もありますが、そういう趣向がない人でも、諸戸はかっこいいと思える青年でしょう。逆に僕には主人公がへなちょこ過ぎてちょっと…って思いましたが。うん。諸戸、不遇だったけどかっこよかった。かっこよかったから、不遇だった。最後はあっさりしすぎな気もしたけど、何度も読み返せということでしょう。

ではでは、そんな感じで、孤島の鬼でした。なかなか曲者だとは思いますが、先入観や自分の中の常識は取っ払って作品として楽しんでもらいたいです。

Amazonで『孤島の鬼』のレビューを見てみる

にゃんこ先生
江戸川乱歩を舐めてたじぇ…。なめ猫だけに。
孤島の鬼
  • 90%
    読みやすさ - 90%
  • 65%
    為になる - 65%
  • 85%
    何度も読みたい - 85%
  • 90%
    面白さ - 90%
  • 80%
    心揺さぶる - 80%
82%

レビューまとめ

大声では言いにくいが、くっそおもしれーーーーーーーー!江戸川乱歩ってすげーーーー!!…て心で叫びたくなる作品。

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