「返金」や「おためし後の解約」が思った以上に行われない人間の心理

今日は世の中で頻繁に見られる「〇〇日以内なら返金可能」や「〇〇期間無料!気に入らなかったら解約OK!」が、なぜ効果を上げているのかを説明したいと思います。この心理を覚えておいて、自分が売り手になった時に活用してもよし、自分が買い手にまわった時に気を付けるのもよし、知っておいて損はないと思います。

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返金保証は実は、会社ひとつ潰れてもおかしくない保証

まず、〇〇以内なら返金可能という売り文句ですが、大抵、この売り文句はあり得ない保証が伴います。例えばダイエット食品や健康食品などで効果が出なかったら返金します!というもの。

購入者側からすれば、「効果が出なかったら…と、そこまで自信を持っているなら試してみようじゃないか」という気持ちにさせてくれますが、実は、売り手側はそれほど自信があるわけではありません。

自信を持って見せることで試してみようじゃないかという気持ちが起きる事を知っているが為に自信を持っているフリをするのです。

そもそも宣伝している時に「効果には個人差があります」と小さく書いてあるぐらいですから、すべての人に効果があるなんてありえないのです。実際、効果がある人は購入者の半分以下でしょう。それは作っている側の人間が一番知っている事です。もし、その半分以上の人が本当に効果が出なくて、その返金にすべて応じていたら商品を製造するコストもかかっていますし、返金にかかるコストだけでも莫大なものになり会社ひとつが消えてしまってもおかしくない損失になります。

しかし、それでも「効果が出なかったら返金」という保証を付けます。

なぜなら、効果が出なかった半分以上の人が返金保証を使わないからです。

「効果が出なかったら返金」

この言葉には含まれていないある事柄が僕らを返金要求から遠ざけているのです。

人は一度手に入れた物や習慣、思考を手放すのにあり得ないほどの苦痛を感じる

「効果が出なかったら返金」

と聞くと効果が出なかったらお金が返ってくるんだったら安心って思いがちです。確かに返金要求をすればお金は返ってきます。しかし同時に商品も返さなくてはいけません。

もちろんこれが1日~3日ぐらいで返金を決めたのであれば全く問題はないのです。

しかし、〇〇以内に効果が出なかったら返金という条件の場合、たいていは効果が出るまで待たなくてはいけませんから最低でも2週間、長くて3ヶ月~1年ほどの期間を様子見してくださいという指示があります。もし、この指示に従わなかったら返金には応じませんという所もあります。実際に使ってみて効果がなかった場合という条件ですのでと言われ、使わざるを得ないのです。

そういわれると当然、効果が出てしまえばこちらとしては万々歳ですし、効果が出なかったらお金返ってくるんだろ程度にしか考えていませんから、2週間なり3ヶ月なり実行してみます。

そのうち、その商品を使うという行動は生活の一部になり、意識しなくてもその商品を使っている状況が出来上がります。この状態まで行ってしまえば会社としてはもうけもの。

生活の一部まで浸透してしまった商品はたとえ効果があまり見られなくても、今まで続けてきた自分を否定することは出来ず、今更辞められないという思いにとらわれはじめます。

人間はすでに失われてしまったもの(支払った現金)よりも、これから失わなわなければならないもの(商品を使う習慣)により苦痛を感じます。返金を請求するためには商品を返さなければならない。商品を返してしまうと今までと同じような毎日を送れなくなる。変化を嫌うのが人間の習性、または失う事を極度に嫌うのが人間の習性。

そのため、効果が出なかった半分以上の人のさらに半分以上の人が返金要求が出来る条件が整っているにも関わらず返金要求をすることがないのです。

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ネットオークションでのやりとりを考えてみましょう

たとえば、これは物に限ったことではありません。頭に持っているイメージですら人間は手放すことを極端に嫌います。ネットオークションを利用した事があるでしょうか?

あれは入札期間が決められていて、その時点での最高入札額を入札した人の名前が表示されるようになっています。たとえばあなたがネットオークションで欲しい腕時計を発見し、1万円までなら払ってもいいかなって思っているとします。そして現在は誰も入札していませんので、あなたはとりあえず5000円を入札し、現在の最高入札者です。

オークションの終了まであと1週間。一日を終えるごとにあなたはサイトをチェックし、相変わらずあなたが最高入札者であることを確認しあなたは安心します。

オークション終了まであと3日。相変わらず最高入札者はあなたです。あなたはその時計を手に入れ、お気に入りの服と一緒に腕時計をつけている自分を想像しニヤリとします。友人に新しい時計を手に入れたと言ったら羨ましがってくれるかなと想像し、ネットオークションって便利だよなという会話を頭の中で作り上げます。そんな幸せなことで頭を一杯にし眠りにつくのです。

オークション終了まであと3時間。あなたはドキドキしながらサイトを確認していますが、いまだに最高入札者はあなたです。カウントダウンされる時計のスピードが速くならないものかなぁと思いながら、パソコンを休止状態にして、自分の仕事に戻ります。

オークション終了まであと1時間。再びサイトをのぞいてみると最高入札者の名前が他の人に変わっています。ビックリしたあなたは最初に予定していた最高投資額である1万円を入札し、再びあなたが最高入札者になりました。

すると時間が経つたび最高入札者が入れ替わり、現在の入札額は19000円。あなたは「私の時計に何をする!」とつぶやきながら2万円を入札し、タイムアップ。見事あなたが2万円で落札し、腕時計はあなたのものになりました。

最初の予定では1万円までが限度だったはずが、いつの間にかオークションに出品されている時計はすでに自分のものだと考えるようになり、他の人に奪われる事に苦痛を感じ、2倍のお金を投資してしまっていた。

実際、落札するまでその時計はあなたのものではなく出品者のものなのに、なぜか頭の中では自分の所有権が発生してしまっている。

頭の中のイメージですら失うことに苦痛を感じるのが人間の習性なのです。

一度持ち上げてしまった生活基準を落とせないのもここの原因がある

人間は一度手に入れてしまったものを中々簡単には手放せなくなります。たとえば家賃3万円で生活していたあなたが、仕事が順調にいっていて給料もそれなりにもらえるようになってきたので、家賃10万円の部屋に引っ越したとします。

しかし、次第に会社の経営が厳しくなり、あなたの給料は激減。毎月10万円の家賃を払うのも厳しくなりました。そこで元の3万円の家賃の家に戻ろうかと頭では考えてみるものの、あの生活にはもう戻りたくない。食費や日々の節約をすればなんとか10万円の家賃でもやっていけるよなと自分を納得させ、維持しようとします。

人間は一度手に入れた生活環境などを変える事は、自分で思っているよりも数十倍難しい事なのです。昔、逮捕された小室哲哉さんも僕はかなりドストライクな世代だったので、逮捕にはすごく驚きましたが、この原理が働いていると思いました。人間は一度持ち上げてしまった生活環境を下げることは東大に合格するよりも難しい。

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この原理を利用したのがおためし後の解約OKです。

もうおわかりでしょうけど、この原理をうまく利用したのがおためし後の解約OKです。最初の2週間、ないし1ヶ月や3ヶ月は無料ですので使ってください。そして必要なかったら解約していただければ完全に無料ですので。という宣伝文句。テレビのアンテナとかでよく見かけます。

これを聞いて、月額は高いと思うけど、3ヶ月の間無料だったら無料の間でも試してみるかとなったらもうすでに抜け出せない。

相手が用意した期間の間にあなたは存分にスポーツ放送やアニメ、海外ドラマなどなど地上波では観られない番組を楽しむ。次第に地上波よりもそっちの番組ばかり見るようになり、おためし期間が終わりを迎えるころ、月額の料金は高いとわかっているけれど、地上波以外の番組を手放す方が痛いと考えてしまっている自分がいます。

そして、解約をせずに高い月額を払って使うようになるのです。

この原理を利用するのであれば期間を長くする事と無理にでも使ってもらう事を徹底するとよい

以上のように、人は一度手に入れた物は手放すことが非常に困難になる事がわかってもらったと思いますが、もしこの原理をあなたのビジネスで応用しようと思った場合、気を付ける点は2点です。

ひとつは期間を出来る限り長くする事。期間を長くすればするだけその物に対する所有イメージが高くなります。出来る限り、その商品は自分のものだと思ってもらう事が必要なのです。

そしてさらに期間を長くすることによって、後回しの原理も働き、今日やってもいいけれど明日やってもいいなら明日やるという人間の習性が働き、気が付けば返金保証や解約が存在していた事自体忘れてしまう人が出てきます。

さらに言い方は悪いですが思い出すきっかけを与えないようにクレジットカードによる自動引き落としにしておけば、気が付いた頃には引き落としがされています。…ま、結構ありますよね、このシステム導入しているところ。そのままご利用いただく場合はクレジットカードによる自動引き落としが便利ですのでご連絡いただかなくても支払出来ますっていう文句で。

もうひとつは無理にでも使ってもらう事。

少ないながら返金や解約する人は必ずいます。その人達に共通しているのは、全く使わずに家に放置していたという点です。使わなければ所有のイメージも抱けませんし、生活の習慣にもなりません。何の愛着もわかないものを手放しても何の痛みも感じないのです。

その状況を避ける為、無理にでも使ってもらう工夫を凝らすことが必要です。

化粧品の効果がなかったら返金なんてものは典型的な例で、実際に使ってみてもらって効果がなかったら返金しますが、買って使わなかったから返金してくださいというのは応じませんとあらかじめ言っておくみたいな。

またお試しの場合だったら、無料でお使いいただく為に条件が必要ですなんて言って、最低でもひと箱お使いください。トータル100時間以上ご視聴くださいとか、別の角度から、解約いただく前に使用感のアンケートにお答えいただくのが条件ですとか、使用感アンケートに答えていただくと〇〇をサービスしますのように、とにかく相手が無料であれなんであれ、その商品を無価値だと思って家に放置せず、何かしらの行動を起こしてもらえるように工夫してください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。考えてみれば結構当てはまる事多かったなぁって思いませんでしたか。返金やおためしにはそんな秘密があったのです。お試し水の浄水器とか周りを見ればこの方法を用いている場所は沢山あります。

この事を知っていたとしても意外と一度手に入れたものを手放す勇気というのは難しいもので、恐らく手放すよりはお金を払おうという気持ちにこれからもなってしまうと思います。

ですので、出来る限りぼくらが出来る抵抗というのは「所有権の放棄」をする事。これは自分のではない。人様のものだと思いながら扱う事ぐらいです。

それほど強力な人間の心理ですので、もしあなたがビジネスを行う場合には参考にしてみてください。まぁ、別に騙しているわけではないですし。本当にいいものなら、多くの人に使ってもらうのがベストなわけですから。

そんな感じの話でした。長くなりましたが読んでいただきありがとうございました。

ではでは、今日は返金保証についてのお話でした。

あ、歳を取ると「最近の若い者は…」と言って自分たちとは違う考えを受け入れられなくなるのも、自分たちが体験した時代の経験という所有物を手放したくないからですので、この原理だという事が出来ます。

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