ブログ小説も三回目の更新になりました。三日坊主にならずに済みました。
三日坊主。何かを始めても続けることが出来ないことを言いますが、なぜ坊主なのかを調べてみると、お坊さんになろうとしてお寺に行ったものの、修行が厳しくて三日で辞めてしまったという話からだそうです。
ってか、そもそも坊主という言葉自体、お「坊」さんの「主」って書くのだし、ものすごく偉い人なんじゃないか?と思ったりもするのですが、「よう、ボウズ」とか「悪戯坊主」みたいな尊敬からは遠いような使われ方をしているのが気になります。
さて。雑談はそのぐらいにして、三日続けてみると面白い事がわかってきました。
僕の記事は基本的に長く書く癖があるのですが、時間をかけて必死に頭をグルグル回してまとめ上げた長い記事よりも、ブログ小説の方が読まれているのです。
誰も読まないかもしれないなぁ〜なんて思いながら始めたのですが、完全に予想が外れました。やってみなければわからない事もあるんですね。
…という事で今回も引き続き、過去に書いた小説をブログ形式に変換して投稿していきます。タイトルは映画のような人生をです。
全部で39章分あるのですが、今回はその中で第三章「マン・オン・ザ・ムーン」をお送りしたいと思います。よろしくどうぞ。
【ブログ小説】映画のような人生を:第三章「マン・オン・ザ・ムーン」
自分が今何をしていたのかさえわからなくなった。今の音は何だ。そう思う頃に、また間を開けて三回。コン、コン、コン。ただただ音が続く。奇妙なぐらい等間隔に。そしてリズミカルに。突然の出来事にぼくは動けなかった。
コン、コン、コン、コン。ふとその音が四回になった時、我に返り、金縛りが解けた。その音がぼくの部屋の玄関のドアをノックする音なのだと認識したのはその時だ。ぼくは立ち上がって玄関に向かった。あまりに動揺していたがために翔子を足で蹴飛ばしてしまった。しかし、そのまま玄関のドアノブに手を伸ばした。後ろの方で翔子の羽がカタカタ文句を言っていた。
「ど、どなたですか?」扉を開ける前に心臓を抑え、喉から声を絞り出して尋ねる。
口は水分を失い、舌は口の中にへばり付いているようだった。その為、ちゃんと言葉になっていたかは定かではない。ただ、何の返事もなくまたノックが三回続いた。コン、コン、コン。ぼくは気になってのぞき穴を覗く。深い闇。急にぼくの中に恐怖が訪れた。何も見えない。光もない。しかし、人の気配はする。誰だ。
「どなたですか?」もう一度尋ねる。今度はちゃんと声に力を入れた。ただし、返答は変わらない。ノックが三回。コン、コン、コン。やはり相手は喋らない。開けるべきか開けないべきか。ぼくは戸惑った。
普通に考えれば新聞の勧誘か何かだろう。しかし、そういった類のものは引っ越してきてから、いまだにやって来た事がない。可能性は低いだろう。
それなら誰だ。大学の友達か? いや、住所については誰にも教えていないはずだ。親か? なぜ急に?
ところで今は何時なのだ? 部屋に籠ってから時計を見る事をやめた。時間がぼくを追いかけてきたからだ。時計の音が妙に気になった。だから部屋の時計はすべて捨てた。詳しい時間はわからない。窓の外から推測するに雨あがりの空にしては暗く、夜更け前の空にしては明るい。二十時ぐらいかもしれない。その時間に親が訪ねてくるものだろうか? なぜ何も喋らない。
そう考えていると、今度はノックが四回。コン、コン、コン、コン。動悸で胸が苦しくなった。怖くなった。開けるまでノックは続く。コン、コン、コン。コン、コン、コン、コン……。
開けないという選択肢はなさそうだ。逃げようとでも思ったのか、ぼくは無意識に窓を見る。月が恐ろしいぐらいに大きかった。嘲笑うように輝いていた。不気味だった。ぼくには逃げることは出来そうもない。
「今開けますから、ちょっと待っていて下さい」声にならない声を出しながら扉の鍵を開けた。
その瞬間、向こう側から扉を引っ張る力が加わり、ぼくはバランスを崩してしまった。
「なんや、伊波、ドア開けるの遅いやんけ」聞いたことがあるような、ないような、微妙な親しみがこもった声が、前のめりになったぼくの頭の後ろから聞こえた。
【ブログ小説】映画のような人生を:第三章「マン・オン・ザ・ムーン」あとがき
いかがだったでしょうか。三日目にて、ちょっと裏話的なことを話しますと、この作品、本来は「花」というタイトルの小説だったのです。
でもブログ小説にする時に「花」というキーワードでは検索上位に入るのが難しそうだったので、「映画のような人生を」に変更しました。
それと各章にタイトルをつけていますが、それも変更しています。
第一章「雨」→「雨に唄えば」
第二章「都会」→「都会の幻想」
第三章「窓の月」→「マン・オン・ザ・ムーン」
と、言わずもがな、映画のタイトルからサブタイトルを付けさせてもらっています。基本的に検索する人がいなければ、読まれないので、そういう変化をさせているのです。
まぁ、本当は今回のサブタイトルは「笑う月」と迷ったんですけどね。安部公房の随筆集からあやかって。でも一応映画縛りにしておこうと思って、マン・オン・ザ・ムーンにしました。
次回はどうなるだろう。元のタイトルは「坊主頭」なんですけどね。坊主頭っぽい映画のタイトルあったっけな。まぁ、次回考えておきます。
ではでは【ブログ小説】映画のような人生を:第三章「マン・オン・ザ・ムーン」でした。
野口明人
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
【ブログ小説】映画のような人生を:次回予告
注意:
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こいつは誰だ。ぼくの目の前には見たことのない男が一人立っていた。病弱とも取りかねないほどに華奢な体だが背は高い。細めの白いボタンダウンシャツを首まできっちりとボタンを留め、色の落ちきった薄いブルージーンズをはいている。その濃淡のない服装のせいで細い体が余計に細く見える。しかし靴だけは、はっきりとした赤のエナメルのスニーカーでひときわ目立っている。中でも妙なのは見事なまでに剃髪されたツルツルの頭と恐ろしいほど落ちくぼんだ両目だった。
次回へ続く!
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映画のような人生を