ブログ小説の二十四回目の更新。蝉について。
セミと言えばどんなイメージですか?映画で『八日目の蝉』っていう僕の大好きな永作博美が出ている映画があるんですけど、そのタイトルにもあるように1週間で死んじゃうってイメージありませんか?
今回の作品の中に蝉が登場するんですが、僕はそのイメージがすごく強くて、そのイメージのまま描いたのに、実はセミは1週間じゃ死なないっていう事が最近わかってきたらしいんですよ。
実際は1ヶ月ぐらい生きるらしいのです。ではなぜ1週間で死ぬっていう説が広まっていたかっていうと、セミの飼育はすごく難しいみたいで、1週間ちょっとで死んじゃうのがほとんどだったようです。
野生の中に入れば長生き出来るのに、人間の手にかかると1週間の命まで短くなってしまう。人間は死神なんじゃないか?なんて事をその事を知った時に思いました。
…という事で、ここからは過去に書いた小説をブログ形式に変換して投稿していく企画。映画のような人生をというブログ小説をお送りします。
全部で39章分あるのですが、今回はその中で第二十四章「蝉」をお送りしたいと思います。セミの間違ったイメージのまま繰り広げられますが、よろしくどうぞ。
【ブログ小説】映画のような人生を:第二十四章「蝉」
千葉は教えてくれた。三木清いわく、『孤独』は大勢の人間の間にあると。
では永遠はどこにあるのだろう。人間の頭の中か? 心の中か? それとも? 手に入れたものがもしも永遠に自分のものだったなら、こんなに失うことが怖いだなんて思わないだろう。
名前舞踏会から帰ると部屋でいつもぼくはそんな事を考えていた。ぼくはいつまでも大学生でいられない。大学生は社会人になる前の最後の自由時間なのだ。モラトリアム期間はいつか必ず終わる。この楽しい毎日もいつかは終わってしまう。
その時、ぼくの傍には誰がいてくれるだろうか。千葉は? 千秋さんは? この関係がずっと続くとは思えなかった。永遠は一瞬の中にあり、一瞬は永遠の中にあった。
楽しかった。相変わらず大学には馴染めずにいたが少しずつ授業にも参加できるようになってきた。学年は違えども千秋さんと一緒の授業を受けたり、千葉と一緒に学食を食べたり、はたまた授業がない空き時間に加藤とサークルの話をしたりした。
サークルに参加することで自分の中で大学に対する姿勢に変化が生まれてきたのだ。その楽しさもいつかは消えてしまう。いつかは次のステップに進まなければならない時が来るのだ。その永遠と一瞬の葛藤がぼくの心に闇をもたらした。
気がつけば翔子は部屋の片隅に追いやられていた。暑い日々も過ぎ去り、蝉もうるさくは鳴かない。
ある日、部屋の窓から蝉が舞い込んできた。ジジジジと鳴き喚いた後、全く動かなくなった。その蝉の様子を一分ほど見続け、動かない事を確認したぼくは手でそっとつまもうとした。
その途端、蝉は最後の力を振り絞りジジジジと喚きだした。ぼくは慌てた。蝉がぼくを追いかけるように飛び回る。十秒ほど喚いた後、今度は本当に動かなくなった。
その蝉が自分の姿を反映しているようで嫌だった。何一つ終わらないものなんてないんだ。蝉の死骸がそう言い残しているようだった。
ぼくはこの先、一体どこに行くのだろう。そんなことを思いながら蝉の死骸を指でつまんで家の屋根に投げた。
【ブログ小説】映画のような人生を:第二十四章「蝉」あとがき
いかがでしたでしょうか。蝉、出てきましたね。
実はね、僕、セミが触れないんですよ。虫全般が苦手でしてね、特にセミはもう恐怖の魔王です。
今回の作品の中にも出てきましたが、実際にセミが窓から部屋に入ってきた事があったんですよ。彼らって、ものすげー羽根をバタバタさせるじゃないっすか。
もうそれが怖いのなんのって。入ってきた時は窓のほっそい隙間から入ってきたくせに、窓を全開にしても全然出ていかなくて、部屋中の壁という壁にばちこんばちこんと身体を当てるわけですよ。
それで力尽きたのか、パタリと地面に裏返しに落ちちゃって、僕は恐る恐るティッシュを三重四重にしてセミをつかもうとしたんです。
そしたら例のごとく、再び生き返ってぐるんぐるん部屋中飛び回ってやんの。
と、部屋で一人叫んでおりましたよ。真夏の昼間に。
伊波は蝉を触れてすごいなぁ〜と、昔の自分の作品を読みながら思いましたとさ。
ちなみになぜセミを家の屋根に投げたのかは思い出せません。子供の歯を屋根に投げる文化はあったんですけど、蝉は投げないよね。なんでだろ。昔の僕は謎が多い。
ではでは、【ブログ小説】映画のような人生を:第二十四章「蝉」でした。
野口明人
ここまで読んでいただき本当に、本当にありがとうございました!
【ブログ小説】映画のような人生を:次回予告
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それはロングピースが切れた時の出来事だった。千葉はいなかった。
次回へ続く!
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