〇 ふつうの会社員が『資本論』を読んでみようと思い立った。社会主義は敗れたのはマルクスの理論が誤っていたからだろうか?そもそもマルクスはソ連や中国が行ったような社会主義革命を推奨していたのだろうか?という疑問をいだいたからだ。まずはマルクスの生前に出版された第一部(この文庫であれば最初の3冊)の読破を目標にする。
〇 マルクスの名前に負けないようにしたいと思ったので最初に、「資本主義経済については現代の我々の方がはるかに多く見聞きしているはずだ」と自分に言い聞かせ、①マルクスの言葉が絶対に正しいとは考えない、②おやと思ったらどんどん突っ込みを入れる、と決めた。そうやって読みだしてみると、うれしいことに意外とわかる!
〇 第1章「商品」では、資本主義社会でさかんに行われる商品Aと商品Bの「交換」の仕組みを説明している。「モノの値段はそれに投入された労働量で決まる」と言うので驚いた(これがいわゆる労働価値説なのか? 値段は需給バランスで決まるんだよ、と突っ込んでみる)。簡単なことを言っているのに、マルクスはとても理屈っぽくて「小麦と鉄が等価で交換されるからには両者は共通の何ものかを含んでいるはずだ」などと議論をこねる(そんな観念的議論に意味はあるのか、とまた突っ込む)。面白かったのは、この章の終わりの方でちょっとだけ社会主義の匂いがしたこと。「自由な人々の共同体で、そこではメンバーは共同体のために働いた時間に応じて分け前を受け取るという団体があり得る」と言っていた。特にこれを推しているわけでもないみたい。
〇 第2章「交換過程」は、世の中で商品交換が盛んになると最後は金などの特定の商品が貨幣として使われるようになると言っている。それだけ。
〇 第3章は「貨幣」。貨幣としての金はあらゆる商品の価値を表現できると言う(そりゃそうだろう)。貨幣はまず商品の売買を媒介する。やがて貨幣は富として蓄積されるようになる。それから経済が発達すると蓄積された貨幣は債務の支払手段として使われる。地代も現物納付から貨幣納付になる。こうして貨幣は段々と金から離れて抽象的な数字となるのだが、国家間貿易の決済手段となるとまた現物の金銀が使われる。(おもしろい、でも驚くような話ではないな)
〇 第4章は「貨幣の資本への転化」。商業が発達すると人は売買を通じて利益をあげる。こうして蓄積された貨幣が最初の資本となる。彼は貨幣をさらに増やすために売買を無限に続け、価値は無限の自己増殖を続ける。このように行動する彼はすでに資本家である。しかし等価交換を繰り返すだけの商業では価値は増やせない(そうかな?)。価値を増やすには労働力を購入して商品の生産にあてなくてはならない。労働力購入のために払う賃金は労働力の再生産に必要な額である(安すぎる!)。ただしそうして購入した労働力がどれだけの価値を生んでくれるかは使ってみなければわからない。
〇 第5章は「労働過程」。労働者は機械などの手段をつかって原料に意図したとおりの変化を加えて生産物を生む。生産物の付加価値が賃金より大きくなるまで働かせると、その超過分が剰余価値になる。つまり長時間働かせればそれだけ剰余価値が大きくなる。これができてはじめて貨幣は資本となる。これを資本主義的生産過程という(私の知っている資本主義はそうじゃないぞ)
〇 第6章は「不変資本と可変資本」。機械や原料につかったおカネが不変資本。機械原料の価値はそのまま生産物に移転するから増減しない。労働力購入に使ったおカネは可変資本。上述のとおり、労働は生産物に新たな価値を付け加えるし、長時間労働すれば剰余価値を生むから可変。(この区別にどんな意味があるの?)
〇 第7章の「剰余価値率」とは、(剰余価値額 ÷ 賃金)のこと。毎日労働者はまず労働力再生産のために必要な時間だけ働く。これが必要労働。その後の時間はもっぱら資本家のために働く。これが剰余労働だ(一日何とか生活できるだけの賃金を払えばその労働者を一日中支配できるということ?超過勤務手当も払わないで?これが当時のイングランドの現実だったということか!)。剰余価値率は資本家による労働者の搾取度を示している。
〇 これで1冊目はおわり。全体の印象を言うと、1)決して深遠な思想を述べているわけではない。むしろ足し算引き算の説明が大半である、2)一貫して労働価値説を前提としているのだが、辻褄が合わないところがあってそこを苦心して説明している感じがする。この労働価値説に無理があると思った。
〇 よしっ!この勢いで2冊目に突入!
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資本論 (1) (国民文庫 25) 文庫
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- 本の長さ415ページ
- 言語日本語
- 出版社大月書店
- ISBN-104272802518
- ISBN-13978-4272802517
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登録情報
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 415ページ
- ISBN-10 : 4272802518
- ISBN-13 : 978-4272802517
- Amazon 売れ筋ランキング: - 160,420位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2023年8月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年4月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』、白井聡さんの『武器としての「資本論」』など、最近やたら『資本論』が再評価されているので、試しに原文を読んでみました。佐々木隆治さんの『マルクス 資本論』によると、この国民文庫の岡崎訳『資本論』が「一番おすすめ」だそうです。『資本論』の和訳はいろいろありますが、佐々木さんの推薦を信頼し、私はこの国民文庫版を購入しました。
マルクスは「労働価値説」と言いまして、「商品の価値は、その商品を生産するのにどれくらいの労働時間が掛かったかによって決まる」という説を唱えました。私は『資本論』の労働価値説の説明を読んで、「何だか違和感があるな」と思いました。今流行りのフリマアプリでは、商品の持ち主である素人が自由に商品の価格を決めています。さらにネットオークションでは、商品の価値を生産者ではなく明らかに消費者が決めています。ですから、商品の価値が生産者側の事情で決まる『資本論』の内容に、私は疑問を持ちました。
経済学に詳しくない私なりに調べたところ、ジェボンズやメンガーなどによって「限界革命」が起こり、マルクスの労働価値説は批判されました。限界革命以後、商品の価値は生産者側ではなく消費者側の価値観に左右されるという説が主流になったようです。さらに私が見た限り、現代ではマスメディアが消費者の価値観を強力に操っていると思います。フリマアプリやネットオークションを見ればわかるように現代では消費者の視点が重要ですし、メディア論も重要だと思います。そのため、生産者視点でありメディア論が希薄な『資本論』の内容は、古いなあと思いました。
私が読んだ『資本論』の入門書は限界革命について全然書かれていない本ばかりで、しかも『資本論』の問題点を素通りしている本が多かったです。経済学を専攻している人なら限界革命ぐらい当たり前だろうと思われるかもしれませんが、労働価値説が後世で批判されていることぐらい大方の入門書でちゃんと説明して欲しいよなあと思います。もちろん『資本論』は、なぜ金儲けがやめられないのか・なぜ長時間労働が蔓延るのかなどに関する有益な知見に満ちており、そこは大いに学ぶべきだと私は思っています。
マルクスは「労働価値説」と言いまして、「商品の価値は、その商品を生産するのにどれくらいの労働時間が掛かったかによって決まる」という説を唱えました。私は『資本論』の労働価値説の説明を読んで、「何だか違和感があるな」と思いました。今流行りのフリマアプリでは、商品の持ち主である素人が自由に商品の価格を決めています。さらにネットオークションでは、商品の価値を生産者ではなく明らかに消費者が決めています。ですから、商品の価値が生産者側の事情で決まる『資本論』の内容に、私は疑問を持ちました。
経済学に詳しくない私なりに調べたところ、ジェボンズやメンガーなどによって「限界革命」が起こり、マルクスの労働価値説は批判されました。限界革命以後、商品の価値は生産者側ではなく消費者側の価値観に左右されるという説が主流になったようです。さらに私が見た限り、現代ではマスメディアが消費者の価値観を強力に操っていると思います。フリマアプリやネットオークションを見ればわかるように現代では消費者の視点が重要ですし、メディア論も重要だと思います。そのため、生産者視点でありメディア論が希薄な『資本論』の内容は、古いなあと思いました。
私が読んだ『資本論』の入門書は限界革命について全然書かれていない本ばかりで、しかも『資本論』の問題点を素通りしている本が多かったです。経済学を専攻している人なら限界革命ぐらい当たり前だろうと思われるかもしれませんが、労働価値説が後世で批判されていることぐらい大方の入門書でちゃんと説明して欲しいよなあと思います。もちろん『資本論』は、なぜ金儲けがやめられないのか・なぜ長時間労働が蔓延るのかなどに関する有益な知見に満ちており、そこは大いに学ぶべきだと私は思っています。
2023年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第1章の商品のところは、いい加減に扱っている
マルクス経済学の書籍が多いと私は思う。
しかし、価値形態論から貨幣を導き出し、
貨幣を資本にして生産過程が始まる資本主義経済を分析するには、
第1章商品のところはきっちりとやっておきたい。
そういう意味で、この一冊は非常に重要になってくると
思われる。持ち運びも手軽なこの一冊は、どこでも開くことが出来
読むことが出来るので大変便利な書物となっている。
この一冊は、難解なのだが重要な要素が詰まった大事な一冊だと
思われる。出来れば大学の先生に見てもらうのが一番良いのだが、
そのような環境が作れない場合は誤読をしてしまう可能性が高いので
その辺が『資本論』に入り込む時の課題となってくると私は考えている。
マルクス経済学の書籍が多いと私は思う。
しかし、価値形態論から貨幣を導き出し、
貨幣を資本にして生産過程が始まる資本主義経済を分析するには、
第1章商品のところはきっちりとやっておきたい。
そういう意味で、この一冊は非常に重要になってくると
思われる。持ち運びも手軽なこの一冊は、どこでも開くことが出来
読むことが出来るので大変便利な書物となっている。
この一冊は、難解なのだが重要な要素が詰まった大事な一冊だと
思われる。出来れば大学の先生に見てもらうのが一番良いのだが、
そのような環境が作れない場合は誤読をしてしまう可能性が高いので
その辺が『資本論』に入り込む時の課題となってくると私は考えている。
2021年7月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
19世紀 生産における大工業化はその「生産諸力」を格段に拡大しました
特には多数の紡績機械が動力となる蒸気機関に駆動編制(ネットワーク化)され
高度で複雑な労働作業は単純な動作に分解しそれを組み合わせることによって再現し機械に実装されました
そしてこのような生産手段をつまり機械を私たちは扱い労働することになりました
予め定められた所定の駆動力が紡績機械の運転には必要であり
その物理的な仕事量つまり動力量は前記機械の運転時間に比例して決まり測られます
それは私たちの労働時間にも比例相関して決まり測られ
こうして労働力は単一化されその商品としての消費量は労働時間によって測られることになりました
構成する各機能の相関として資本制生産を記述したマルクスはそれをシステム(系)として把握していたともいえます
そして前記の動力に係るネットワークから労働力のモデル化を行い規定したと思われます
他方で商品に実現される付加価値の内的構成比が大きく換わった現代では新しい労働力モデルが必要になっています
動力に係る付加価値構成割合よりもIPに係る付加価値構成割合が大きくなりつつあるのです
おそらく少なくとも1000倍以上(1970年代比)にも達していると思われるIPフィールドにおける「生産諸力」は
IPネットワークを科学的な労働空間つまり私たちの頭脳内を生産工程に換え
「生産諸力」に新たなドメインを形成しつつあります
IPに係り生産されたデザインが動力に係り商品として実装される姿を私たちは日々に見ています
※1 Intellectual Property
※2 「経済学批判」岩波文庫 第51刷 第13頁第14行
特には多数の紡績機械が動力となる蒸気機関に駆動編制(ネットワーク化)され
高度で複雑な労働作業は単純な動作に分解しそれを組み合わせることによって再現し機械に実装されました
そしてこのような生産手段をつまり機械を私たちは扱い労働することになりました
予め定められた所定の駆動力が紡績機械の運転には必要であり
その物理的な仕事量つまり動力量は前記機械の運転時間に比例して決まり測られます
それは私たちの労働時間にも比例相関して決まり測られ
こうして労働力は単一化されその商品としての消費量は労働時間によって測られることになりました
構成する各機能の相関として資本制生産を記述したマルクスはそれをシステム(系)として把握していたともいえます
そして前記の動力に係るネットワークから労働力のモデル化を行い規定したと思われます
他方で商品に実現される付加価値の内的構成比が大きく換わった現代では新しい労働力モデルが必要になっています
動力に係る付加価値構成割合よりもIPに係る付加価値構成割合が大きくなりつつあるのです
おそらく少なくとも1000倍以上(1970年代比)にも達していると思われるIPフィールドにおける「生産諸力」は
IPネットワークを科学的な労働空間つまり私たちの頭脳内を生産工程に換え
「生産諸力」に新たなドメインを形成しつつあります
IPに係り生産されたデザインが動力に係り商品として実装される姿を私たちは日々に見ています
※1 Intellectual Property
※2 「経済学批判」岩波文庫 第51刷 第13頁第14行
2015年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まだ読んでいない。これから、じっくり読む予定ですが、楽しみです。
2020年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
資本主義とは究極的には剰余価値に還元されると思う。資本家が単純再生産か拡大再生産のいずれかを選択するにしても、企業が存在することは剰余価値が生じることが前提となっているからだ。
という訳で、ニュースでGDP成長率が頻繁に報じられるのも納得。
という訳で、ニュースでGDP成長率が頻繁に報じられるのも納得。