『そして誰もいなくなった』は2度読んでも面白い。犯人やトリック…

ミステリー
そして誰もいなくなった

著者:アガサ・クリスティー
翻訳者:清水俊二
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫)
出版年月日:2003/10/1
ページ数:367ページ
ISBN-10:4151300805

『そして誰もいなくなった』を最初に読んだのはもうだいぶ昔の事。犯人も知っているし、トリックも知っている。それなのに何故だろう。もう一度読み始めたら、ページめくりが止まらない。この本はこんなにも面白く、人に勧めたくなる本なのだという事を初めて知った。

昔書いたレビューがあまりにもお粗末な内容だったので、もう一度この本についてオススメしていきたいと思います。まだまだこの本の魅力を表現できていないと思うけど、クソのような昔の自分のレビューよりは少しはマシになるはずです…

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10秒でわかる『そして誰もいなくなった』のストーリーのまとめ

孤島のインディアン島に集められた職業も年齢もバラバラの男女10人。どこを探しても招待主の姿が見つからない。やがてレコードから奇妙な声が彼らの共通点を告げる。不気味なインディアンの童謡の歌詞が飾られた部屋。やがてその歌詞通りに一人また一人と殺されていくのだが…

もし、あなたに喫茶店で『そして誰もいなくなった』ってどんな本?あらすじは?と聞かれたなら…

野口明人
この本は一言で言えば、“クローズドサークルと見立て殺人のお手本のような推理小説”なんだ。クローズドサークルって何?って人と推理小説を読んだことないんだけども、見立て殺人って?な人にオススメしたい一冊だね。
ちぐのさん
…とか言いつつ僕もそれほど推理小説を読んだ事ないし、あんまり人が死ぬ系の話が得意ではないんだけれど、でもこの小説はすごーく読みやすくて、面白かったし、クローズドサークルって言葉の意味を理解して、見立て殺人ってこういう事をいうのね!ってよくわかった。つまりはミステリー入門にすごく適した本だと思うんだ。もちろんミステリー通が読んでも面白い作品なんだけどさ。殺人描写がグロくないのに引き込まれるってのがいいね。
野口明人
まずクローズドサークル。これは簡単にいえば外界と連絡も取れず逃げ出せない状況の事。金田一少年の事件簿とか名探偵コナンでよくあったっしょ。吹雪の雪山の小屋とか、無人島みたいな。『そして誰もいなくなった』の中でもインディアン島という孤島に連れて行かれ、なおかつ嵐になってしまって連絡船が来ないっていうまさにクローズドサークルな状況なのね。
ちぐのさん
んで、見立て殺人。これは童謡とか昔の詩になぞって殺人が行われていく事ね。なんか昔の民謡とかって不気味なの多いじゃん。日本でも「とおりゃんせ」とか「かごめかごめ」とか小さい頃に聞いてなんとなく怖かったもん。そんな感じでその童謡的なやつをなぞっていくのよ。『そして誰もいなくなった』でもインディアンの童謡が最初に紹介されて、その通りに殺人が起きるの。

 十人のインディアンの少年が食事に出かけた
 一人がのどをつまらせて、九人になった

 九人のインディアンの少年がおそくまで起きていた
 一人が寝すごして、八人になった

 八人のインディアンの少年がデヴォンを旅していた
 一人がそこに残って、七人になった

 七人のインディアンの少年が薪を割っていた
 一人が自分を真っ二つに割って、六人になった

 六人のインディアンの少年が蜂の巣をいたずらしていた
 蜂が一人を刺して、五人になった

 五人のインディアンの少年が法律に夢中になった
 一人が大法院に入って、四人になった

 四人のインディアンの少年が海に出かけた
 一人が燻製のにしんにのまれ、三人になった

 三人のインディアンの少年が動物園を歩いていた
 大熊が一人を抱きしめ、二人になった

 二人のインディアンの少年が日向に座った
 一人が陽に焼かれて、一人になった

 一人のインディアンの少年が後に残された
 彼が首をくくり、後には誰もいなくなった

引用:「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティー著,清水俊二翻訳(早川書房)

野口明人
これね。テン・リトル・インディアンズっていうマザー・グースのひとつなんだそうだよ。10人のインディアンって日本では言われているんだって。まぁもともとはインディアンを差別したような歌で現在では原曲はあまり歌われていないらしいけど、この作品の中では原曲の方を用いている。まぁ、原作は実はすげー残酷だってのはグリム童話とかでもよくある話だよね。その残酷な童謡を見立て殺人に使っているわけだ。
ちぐのさん
このクローズドサークルと見立て殺人が絡み合って、なおかつこのタイトルよ。『そして誰もいなくなった』だよ?僕が思い描いていたミステリーってのは探偵役と犯人、そして被害者がいて、最後に誰かが種明かしを語るもんだと思っていたんだよ。ってことはだよ?誰かが生き残ってないといけないわけ。でも誰もいなくなった。生存者ゼロ。え?え!?ってなるわけ。
野口明人
登場人物もさ、探偵役的なのがいないんだよ。集められた10人ってのが裁判所の元判事、秘書、元軍人のにーちゃん、信仰心の強いおばあちゃん、元軍人のおじいちゃん、お医者さん、遊び人、お屋敷の執事をやってる夫婦、そんで元警部なわけ。そしたら元警部みたいなのが探偵役をやるのかと思うじゃん。でも違う。この警部はがたいがイイだけのおっちゃんなの。特別頭がキレるわけではないの。
ちぐのさん
しかもこの小説の形式がグランドホテル形式チックでさ、各それぞれの登場人物の視点のようなものから語られるわけだよ。そしたら犯人の思考とかわかって来そうなもんだけど、全然わからないように工夫されている。みんな平等でみんな魅力的なキャラ。キャラ立ちがハッキリしているわけ。
野口明人
それがだよ。一人ずつ減っていく。すると人間関係にも変化が現れてくる。その緊迫感ね。最初は真剣じゃなかった人間が徐々に冗談じゃなくなっていって、追い詰められていく様。読んでいるこっちにも迫ってくるものがあるよね。血しぶきブシャー、ノコギリでずたずたに切り裂く!的なグロテスクな表現がなくてもさ、これだけ張り詰めた空気だせるのすげーってなった。
ちぐのさん
案外殺人表現はあっさり。残された人間の恐怖感がびっしり。なのに誰も探偵になれない。解決に導いていくものがない恐怖感ね。どうなるんだ?これどうなるんだ?ってページをどんどん捲ってしまう。
野口明人
ちなみに、この小説2回読んだのね。1回目は犯人を知らずに読んで、2回目は犯人がわかった上で読んだ。でもね、うまーくぼやかしているわけだよ。犯人が誰かって確実に特定出来るヒントみたいなのがほぼない。なんだったら2回目の方が感心しながら読めたから、より面白かったぐらい、この小説は良く出来てる。
ちぐのさん
「ちょっと待て、犯人がわからないってどうなの?ヒントみたいなのがないのって推理小説としてそもそもダメなんじゃないの?」って言われそうだけど、そんなヒントとか推理、はたまた犯人が誰とかトリックがなんだみたいなミステリーに必須な要素みたいなのがなくても先を読みたくなるぐらいの魅力がこの小説にはあるのだよ。人間の心理描写ってのが上手なのか、キャラの書き分けが上手なのか。
野口明人
まぁ、ひとつだけ欠点的なものをあげると、この翻訳のせいかわからないけど、「Sの発言Sの発言Sの発言Sの発言」Sは言った。って書いてある所と「Nの発言Nの発言Nの発言Nの発言」Sは言った。「Sの発言Sの発言Sの発言」って書いてある事がごっちゃになっている部分があるから、これは誰の発言だ?って迷う所がちょこっとだけあったかなぁ。
ちぐのさん
まぁ、最近は新しい翻訳も出ているみたいだから、他の人のも読んでみたくなったけどね。僕は一番レビュー数が多かった清水俊二翻訳の小説を買ったけど、旧訳の方がいいって言っている人もいるし、新しい翻訳の方が読みやすいっていう人もいる。これが海外小説の楽しみでもあるよね。僕は気に入った作品は翻訳者を変えて何回も読み直すのが好きでね。洋書で読めたらいいんだけど、チャレンジした結果、その時間があったら翻訳者を変えた方が何倍も楽しめると思って今はそうしている。
野口明人
って事で、まぁ興味が湧いたらAmazonのレビューで清水俊二翻訳の作品みたり、青木久惠翻訳の作品のレビュー読んで比較してみてよ。まぁ、Wikipediaのページもあるけど、ネタバレがっつりしちゃっているから読み終わってから検索するといいよ。
ちぐのさん
とりあえず騙されたと思って一冊手に入れて、時間が空いた時にでも読み始めてみて。時間忘れられるよ。

…そんな事を『そして誰もいなくなった』について宇治金時の白玉を食べながら、カフェで話すと思います。

『そして誰もいなくなった』で気に入った表現や名言の引用

ちかごろのものは誰でも何でもないことを騒ぎたてる!歯を抜くときに注射を要求する ─ ─眠れないと、薬をのむ ─ ─すぐ、やわらかい椅子やクッションを求め、娘たちはだらしがない恰好をしても平気であるし、夏になると、はだか同様の姿で海岸に横たわっている。

人間は気にしないでいいことを気にするものだ ─ ─妙な目つきで見られると何でもないことを気にすることもあるのだ。

島というものには不思議な力がある ─ ─島という言葉を聞いただけで、幻想的な雰囲気を想像する。世間との交渉がなくなるのだ ─ ─島だけの世界が生まれるのだ。

スカンジナヴィアの神話に出てくる若い武神のように健康と精力がみちあふれていた彼が死んでいる!

世間には、犯人を罪に落とすことができない犯罪がある。

頭のおかしな殺人者というのは会ってみると、案外おとなしい人間なんだ。愉快な奴だったりする

現在までは、被害者がなんら疑念を抱いていなかったから、犯人は容易に目的をとげることができた。これからは、お互いにすべてのものを疑って、絶えず警戒を怠らぬことがわれわれの義務である。警戒にまさる武器はない。

六人、何ごともなかったようにふるまっている六人の人間……。

その言葉は砲弾が炸裂するように彼女の唇から出た。そして、一同を驚かせた。

彼らは互いに相手を敵視し、彼らを結びつけているものは自己防衛の本能だけだった。 そして、五人とも、人間ではなくなっていた。動物にかえってしまったのだった。

たとえどこかに、欠けているところがあるにしても、勇敢なことでは誰にも負けない。危険となら、立派に戦ってみせる。目に見える危険は怖くはない。彼が恐怖を感じるのは、目に見えない危険なのだ。

引用:「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティー著,清水俊二翻訳(早川書房)

『そして誰もいなくなった』は↓こんな作品や世界観が好きなあなたにおすすめ。この小説を読んでいる時にパッと思い浮かんだ映画・小説・漫画・アニメ・テレビドラマ、または音楽など

オススメ大好きちぐのさん
何を当然の事を…と思われる人もいるかもしれないです。なにせこの十角館の殺人はそして誰もいなくなったを下敷きに書いた作品だから!…ミステリーに対する知識が浅く他に思いつかなかったので。

『そして誰もいなくなった』のような小説が好きなあなたに、ぜひ次に読んで欲しい小説はズバリ…

野口明人
読んで欲しい小説ではなく、僕が読みたいと思った小説ですいません。もっとミステリーの教科書的な作品をたくさん読んで知識人ぶりたい!

『そして誰もいなくなった』まとめ

まとめ大好きちぐのさん

この作品で一番素晴らしいと思う所は主人公が不特定な所。様々な視点から描写されていて、それでいて読者を混乱させることはないわかりやすい文章。それは作者が明確なキャラ付を各登場人物に持っていたからだと思います。

とにかく無駄がない。アガサ・クリスティーのすごい所はそこなのだなと思いました。流石、世界で一番本を売り上げている小説家です。

見事でした。グイグイと引き込まれていきました。ひとつのミステリーを完結させるにはちょうど良い長さの作品で、非常に読みやすい。一気読みってのを体感した感じ。本をあまり読まないんだよなぁ…っていう人にぜひ。ミステリー読んだことないんだよなっていうあなたもぜひ。

2度読んでもまだ面白い。犯人がわかってもまだ面白い。恐らく何年後かにもう一度読みたくなりそうな気がします。

ではでは、そんな感じで、『そして誰もいなくなった』でした。

にゃんこ先生
グロテスクな表現がないのに段々恐怖が募っていく。ラストの方はページをめくるスピードが上がりすぎて火が出たにゃ〜

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そして誰もいなくなった
  • 91%
    読みやすさ - 91%
  • 72%
    為になる - 72%
  • 89%
    何度も読みたい - 89%
  • 92%
    面白さ - 92%
  • 74%
    心揺さぶる - 74%
84%

レビューまとめ

本が苦手な人も、ミステリーに触れた事がない人も、とにかく最初にこの本を手に取ってもらいたい。本はこんなにも可能性に満ちている!

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